報酬では上がらない!?理論で紐解くモチベーションの上げ方を徹底解説

ワークライフバランス

仕事をしている以上、『自分自身のモチベーションが上がらない』『部下やメンバーのモチベーションの上げ方がわからない』と悩むこともあるのではないでしょうか。
モチベーションが上がる方法は、どうせ給料を上げることだろうと思っている方も少なくないと思いますが、実はそうとも限らないのです。

給料を上げることもひとつのモチベーションを上げる方法にはなりますが、効果的なモチベーションの上げ方ではありません。
それでは、効果的なモチベーションの上げ方にはどんなものがあるのか。

この記事ではモチベーション理論を紐解いていき、本当に効果が期待できるモチベーションの上げ方を事例付きで紹介します。
モチベーション向上は個人単位・チーム単位どちらにも大切です。今回はどちらにも使える方法を紹介していますので、ポイントをしっかり押さえていきましょう。

モチベーションが向上する取り組みを行い、成果につなげていきましょう。

1.モチベーションはやる気ではない!本来の意味を理解しよう
2.理論から学ぶモチベーションを上げる方法を徹底解説
①「その活動がしたいからする」という動機づけこそ最も効果的なモチベーションになる
②内発的動機づけをもたらす3のポイントを押さえる
3.【事例付】理論を用いたモチベーションを上げる方法
4.まとめ

1.モチベーションはやる気ではない!本来の意味を理解しよう

日本ではモチベーションという言葉が広義の意味を持って使われています。モチベーションを上げる方法を自分自身に落とし込むために、初めに意味をしっかりと理解しましょう。

【モチベーションとは】
人が物事に取り組む際の動機付けのことを指します。

同じ意味合いだと勘違いされやすい言葉として『やる気』があげられますが、全く別物なので、意味・特徴を改めて頭に入れておきましょう。

『先輩から任された仕事は、自分が入社してから一番やりたかった仕事だから、タイトなスケジュールでも引き受けよう』という状況がある場合、

『自分が入社してから一番やりたかった仕事だから』がモチベーションにあたります。
また、『タイトなスケジュールでも引き受けよう』がやる気にあたります。

仮にモチベーションが無くても、やる気さえあれば行動に移すことは出来ます。
しかし行動に移したところでやる気を支える土台がないので、一度やる気をなくすと立ち直すことが難しいでしょう。
一つの物事に対して、持続的にやる気を維持したい場合はモチベーションが必要といえます。

2.理論から学ぶモチベーションを上げる方法を徹底解説

こでは理論から学ぶモチベーションを上げる方法を紹介していきます。
モチベーションについて理解を深める参考にしてみてください。

モチベーション理論とは、人が何によって動機づけられ、やる気が高まるのかを研究したものです。工場など職場を利用した実験がなされ、様々な学者が提唱しています。
この理論を紐解いていくと、モチベーションが上がる要因は何かが見えてきます。

ここでは理論を用いて、モチベーションが上がる要因をポイントごとにお教えしますので、しっかりと押さえていましょう。

①「その活動がしたいからする」という動機づけこそ最も効果的なモチベーションになる

『その活動がしたいからする』というモチベーションこそが、最もやる気を増進させます。
例えば営業職の人であれば、『この商品を売るのが楽しい(から売る)、この商品が売れることが嬉しい(から売る)』という思いです。

これは、デシ&ライアンの自己決定理論から説明することが出来ます。
この理論ではモチベーションを上げる動機づけとして、『内発的動機づけ』と『外発的動機づけ』の2つがあると説明されています。

最もやる気を増進させるモチベーションとして紹介した『その活動自体をしたい!』という動機づけが、内発的動機づけです。
反対に、その活動自体を楽しむのではなく、給与や家族を養うなど何かのために活動する動機づけが、外発的動機づけです。

この理論を使った心理学的実験で、外発的動機づけよりも内発的動機づけの方が、創造性や責任感が優れていると報告されています。
内発的動機付けがあった人に対して、外発的動機づけを与えるとモチベーションが下がってしまうのです。

例として、こんな実験事例があります。


コラム:ソマパズルの実験~報酬は依存を生む~

学生にパズルの問題を与え、パズルを解く際の姿勢が、パズルを解いたときに与えられる報酬によってどのように変化するかという内容である。学生は最初、報酬なしでも喜んでパズルに取り組んでいたのに、いったん報酬が支払われると、たちまち彼らはお金のためにパズルを行うようになった。金銭という報酬が導入されたとたんに、学生たちは報酬に依存するようになったのである。これまではパズルを解く事自体が楽しいと感じていたにもかかわらず、パズルを解くことは報酬を得るための手段に過ぎないと考えるように変わってしまった。
金銭的報酬を用意した後では、いかに短い時間にパズルを解いて報酬を得るかという点にフォーカスが移った結果、一種の「ズル」ですら見られるようになった。

モチベーションを上げる3つの欲求、心理学者デシが明かした報酬と意欲の関係
http://millkeyweb.com/motivation-deci/


また、内発的動機付けのみで外発的動機づけは必要ないのかという疑問もあるかと思います。
給与や労働条件、人間関係等の職場環境は、社員が不満を抱えないよう整える必要はあります。
ただ、過剰な賞与を与えるなどは必要ないといえます。先ほど紹介したように、内発的動機付けがされている人に外発的動機づけを与えると、かえってモチベーションの減少を招いてしまうためです。

②内発的動機づけをもたらす3つのポイントを押さえる

①で紹介した内発的動機づけを引き起こすには、3つの基本的欲求を満たすことが大切です。
基本的欲求はどういったものなのか、下記で紹介していきます。

それぞれの欲求について紹介していきます。

・自律性
自ら行動を選択し、主体的に動きたいという欲求。
例えば、自ら業務の提案を行って、主導で形にしていくことなどを指します。
振られた仕事であっても、ただ言われたままにやるのではありません。自分ごとに落とし込んで、『どうしたら結果をだせるか』『どうしたら効率が良いか』等を考え行動することです。

・有能感
何かを成し遂げて周囲に影響を与えたい、そして何かを得たいという欲求。
『自分は(あることに対して)才能がある存在でいたい』と思うことから生まれる欲求です。

・関係性
他社と深く結びつき、互いに尊重しあう関係性を作りたいという欲求。
上辺だけの仲良しの関係性ではなく、信頼関係のもと自分が気兼ねなく発言できる関係性を指します。

これらの欲求を満たす環境を用意してあげることが、より効果的にモチベーションを上げる方法につながります。

3章ではこれらの欲求を実際の行動に落とし込んで、モチベーションを上げる方法を紹介します。

3.【事例付】理論を用いたモチベーションを上げる方法

ここでは2章で紹介した理論を用いて、実際にモチベーションを上げるにはどのような行動をとったほうが良いのか…ということを紹介します。

内発的動機づけこそが、モチベーションには重要です。
チームのメンバーなど自分以外の人のモチベーションを上げる時も、内発的動機づけを促す必要があります。
『その人をどのように動機づけるか』よりも、『どのようにすればその人が自分自身を動機づけられるようになるのか、その環境や条件をいかに作るか』を考えることが大切です。

組織においては2章②で紹介した『自律性』『有能感』『関係性』の欲求を満たす環境づくりを行う必要があります。
これからそれぞれの欲求を満たす取り組みを事例付きで紹介しますので、参考にしてください。

①自律性を促す方法

自律性を持って働くには、自分自身でその仕事に対する意味・目的をかみ砕き、理解することが大切です。
そのためには、「何を大切にし、どこを目指しているのか?」という「価値観」に対する共感が必要だということになります。チーム・部署単位でしっかりと、方針やゴールを共有し、一人一人のメンバーに何を期待しているかを、時間を取ってじっくり伝えましょう。

また、自律性を促す環境を用意することも大切です。下記で紹介する企業の事例を参考に、社員が自律性を発揮できる環境を用意しましょう。

・社員なら内定者でも誰でも新規事業を提案できる『新規事業提案制度』

 出典元:CNET Japan(https://japan.cnet.com/article/35121811/

LIFULLでは、内定者含め社員なら誰でも提案できる新規事業提案制度「SWITCH」を行っています。

提案は事業タイトルとそのビジョンが伝われば企画書は1枚でもOKとし、身構えることなくアイディアを発信できる工夫がなされています。100社の会社を立ち上げ100人の経営者を育てるためには、まずアイディアが必要であるとし、ジャストアイデアでも受け付ける体制を整えています。

またより多くの社員に提案してもらうために3つのことを行っています。
①エントリー前段階で特定の領域に特化した勉強会や、過去に事業を立ち上げた人たちとのランチ会などを実施②全社員の中から有志でSWITCHのイベント企画・運営を行い、文化を醸成③複数人でアイディアを出し、役割分担を行うチーム制を推奨
こういった取り組みの結果、エントリーは年間100件を超え、多くの社員が新規事業について主体的に考え行動しています。

・移動したければ自ら手を挙げる『社内公募制』
クックパッドでは、社員が「やりたい」という意思を持つことや「チャレンジしたい」という気持ちを重視し取り組みを行っています。
社内公募は直接人事部に申し込み、所属長の許可や承認は必要なく、公募に申し込んだ事実も伏せられるといった配慮がなされています。

異動する社員の上司は異動を拒むことができず、社員の主体性が尊重されます。
不採用となった場合でも、その理由は本人にフィードバックされます。スキルが不足しているとされた社員には、必要なスキルを習得するための研修メニューを自分で選ぶことができるフォロー体制も整っています。

・業務時間内に社員が自主的に学びたいことを勉強できる『キャリア支援制度』
協和では、業務時間内の10%の時間(1か月で2日分)を使って、AIにとって代わることが出来ない独自貢献点を見つけることや、社員が身に付けたい知識・スキルについて勉強することができる『キャリア支援10%ルール』を設けています。
会社として社員の成長を願い、また学んだ知識・ノウハウを業務に生かせることを期待した取り組みです。

社員は図書館に出向き本を読んだり、資格の勉強を行ったりすることで時間を使っています。実際にこの制度を利用し、管理栄養士の資格を取得された方もいるそうで、健康・美の商品を扱っている仕事にも一役買っています。

・主体的に学びたいという社員の想いに会社が投資する『支援金制度』
トライバルメディアハウスでは、業務に関連する領域で、「もっとこの領域を伸ばしたい!」と思うテーマの自己啓発を支援する『能力開発支援金制度』を導入しています。入社半年を経過したスタッフが対象で、年に1回、上限10万円を支給しています。

それぞれ、宣伝会議のマーケティング講座に行ったり、統計学を学んだり、海外のカンファレンスに出かけたりと活用されています。

②有能感を促す方法

メンバーに対して、(ある業務や分野に対して)出来ていると実感させてあげることが大切です。ミーティングや朝礼・夕礼の際に、社員の頑張りをチーム全体に共有すると良いでしょう。本人だけでなく、チーム全体のモチベーションにも影響を与えます。
また、メンバーが成し遂げたことによって得た知識・ノウハウを、アウトプットできる場を用意してあげることも大切です。
有能感を高める企業の取り組み事例を下記にて紹介していきます。

・毎月活躍した社員にスポットライトをあて全社に共有する『表彰制度』


https://www.interspace.ne.jp/blog/997.html

インタースペースでは、活躍している社員に光を当てたい!という想いから、年2回の表彰式で称される『IS HEROES』と毎月の表彰『Month HEROES』で表彰を行っています。
上司やメンバーから受賞理由のコメントをもらうことで、メンバーの次なる挑戦への活力になります。
受賞者は、受賞に至った成功要因やどのようなことを意識して仕事に取り組んだのかを全社に共有することで、一緒に働く仲間にとっても新たな気づき、刺激を与えることにも繋がっています。

・社員が講師として知識・ノウハウを社員に伝達!『社内認定講師制度』


https://www.softbank.jp/corp/news/sbnews/project/2016/20160121_01/

ソフトバンクでは、『現場で培われたより実践的なノウハウが生かされた研修の方がいいのではないか』という社員の率直な意見が原点となり、社内認定講師制度が始まりました。
実際に仕事で得たノウハウや知識を社員に還元することで、受講者は知識を学ぶだけでなく、実際に明日からでも使える能力を得ることができます。

研修講師の募集は公募で、『書類審査→面接→認定試験』を通過したうえで認定されます。
また満足度調査では、外部講師よりも社内講師の方が満足度が高いという結果が出ており、認定講師の必要性を裏付けています。

詳しくは下記の記事にて紹介していますので、是非ご覧ください。
【企業内大学】ソフトバンクや東芝も開設してる!企業の魅力度が上がる取り組みを大公開
https://and-l.jp/magazine/corporate-university/

また有能感を感じるためには、知識・スキルを身に付けることが大前提として必要になります。
知識・スキルを取得できる場を用意し、自ら学び成長したいと考える社員の背中を押すことで、モチベーションの向上につながります。

・自己成長に会社が投資を行う『教育手当制度』
ZOZOでは、スタッフの自己成長を目的に『自学手当』を支給しています。毎月2,500円の支給額は勤続年数に応じて増え、最大で25,000円が支給されます。
スタッフ一人ひとりが自学手当を利用してインプット量を増やすことで、社内や社会に対していいアウトプットを増やし、いい影響を与え合うことを目的としています。

・専門的知識を持った外部講師から学ぶ『勉強会』


https://reachone.bizreach.co.jp/entry/2017/08/10/150451

ビズリーチでは、専門的な知識を学ぶために、外部講師を招いた『社内外勉強会』を開催しています。エンジニア向けの新技術やコードレビュー会など、より知識やノウハウを学びたい人にとって参考となる勉強会になっています。
社内のさまざまな部署で開催されており、わざわざ外に出向かなくても参加できるのが、社員に喜ばれるポイントです。

③関係性を促す方法

単に社員同士が仲良くなるというわけではなく、信頼できる関係性を築くことが重要です。
そのためには、社員一人一人が本来の自分をさらけ出し、気兼ねなく発言できる環境をつくることが大切になります。
そういった環境を作ることで、『こんなこと言ったらバカにされそうで恥ずかしい』『相手の考えていることがわからず疑心暗鬼になる』という感情を取り除き、率直な意見を言えるようになります(心理的安全性)。Google社では、この心理的安全性こそ生産性の向上につながるという調査結果を発表しています。

それでは社員が気兼ねなく発言できる環境を作るためには、『メンバーの声に耳を傾ける』ことが大切です。どういった取り組みをしていけばいいのか、企業の事例を参考に見ていきましょう。

・直属の上司はもちろん社長を指名することも可能な『1on1面談』
ロゴスウェアでは、人事評価の公平感、社員の納得感を目的に1on1を導入しています。
「いつでも、誰とでも、何についてでも、1対1で話し合える」という仕組みになっています。
通常は、直属の上司とミーティングをおこないますが、他部署のマネジャーや、場合によっては社長といったように、あらゆる社内の人物と1on1を設定することもできます。

自ら議題を決め、1on1のための資料を準備し、そこから1on1を申し込む形式となっています。
目標設定、進捗報告、評価のフィードバックなどにも1on1が使用されているとのことで、「自ら考え状況を判断し率先して行動する」という行動哲学を反映した取り組みとなっています。

・時間の都合がつきやすく、ラフに意見交換を行える『ランチ会』


https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000007960.html

ドゥクラッセでは、月に1度行われる親睦と情報交換を兼ねた『ランチ懇親会』を開催しています。
コールセンター業務を担当するパートの女性15人がランダムに選ばれ、社長やコールセンター部長ら幹部を含む社員数人とランチを食べに行きます。

日々、コールセンターで受ける顧客からの要望などは全社で共有するが、「リポートに載らないような小さな声まで(上司に)届けられる」場として活用されています。社長や部長らもその発言に耳を傾ける姿勢が伝わっているので、ラフな会を通して踏み込んだ話もできるそうです。


コラム:二要因理論~モチベーションが上がる土台を整えなければ大変!~

ここまでモチベーションが上がる方法を紹介してきましたが、動機づけがなされるよう土台を整えなければモチベーションは上がりません。

その土台というのが、業務内容に見合った給与や良好な人間関係などの職場環境を指します。これは、ハーズバーグの二要因理論によって研究結果が発表されています。
「仕事上どんなことによって幸福と感じ、また満足に感じたか」ということと、「どんなことによって不幸や不満を感じたか」という2点について質問を行うというものでした。

質問を行った結果、「衛生要因(不満足要因)」と「動機づけ要因(満足要因)」の2つの要因があり、全く別の要因によって満足・不満が決定づけられていました。「衛生要因」とは、会社方針や職場環境、給与、対人関係などを指します。これらの要因が不十分なときに、人は不満足と感じます(ただし、十分であっても満足感をもたらすものとは言えません)。
一方、「動機づけ要因」とは、仕事内容、達成感、承認、責任、昇進、成長の可能性などを指します。これらの要因が十分であるときに、人は意欲が高まります。(ただし、不十分であっても不満の原因にはなりません)。満足要因が満されることで、積極的な動機付けが行われ、やる気が増幅します。やる気を引き出すには、衛生要因が満たされるだけでは足りず、動機付け要因が働く必要があります。
一方、動機付け要因だけを増やしても、衛生要因が満たされていなければ、従業員の不満が高まっていきます。
言い換えれば、衛生要因を満たすことは、やる気を引き出すための前提条件と言えるでしょう。企業が業績を伸ばすには、不満を取り除き、いかに動機づけをしていくかが重要です。


4.まとめ

いかがでしたか。
モチベーションは自らその活動に取り組みたいという動機づけこそが、一番やる気を持続させるパワーを持っています。自分自身のモチベーションを上げる時はもちろん、チームや部のモチベーションを上げる際も『自律性』『有能感』『関係性』3つのポイントを意識して仕事に取り組んでみてください。