話題の健康経営!導入企業から見える生産性向上をもたらす取り組みと効果を徹底取材

モチベーション・はたらく環境

突然ですが、今あなたの所属している部署・チームメンバーの体調は万全だと思いますか?

体調不良のまま出社した社員は、パフォーマンスも低下し、期待していた業務すらこなせないこともあります。その社員が複数いれば…会社の生産性を下げることに直結することは言うまでもありませんよね。

そこで近年注目されてきた言葉が『健康経営』です。
健康経営とは、社員の健康を経営的な視点で考え、最大限のパフォーマンスが出来るように施策を打つことです。

ここでは、健康経営とは具体的にどういったものか紹介するとともに、健康経営を取り入れている企業の事例、また健康経営を導入するステップまで網羅的に紹介します。

健康経営を取り入れて、社員のパフォーマンス向上を図りましょう!

1.社員の健康を促進する健康経営は『生産性の向上』をもたらす!
1-1.健康経営とは
1-2.食事・睡眠・運動…社員の健康に関わる全ての取り組みが健康経営
2.健康経営の取り組みが活発な中小企業特集!事例から学ぶ取り組み成功の理由とは?
①毎朝筋トレでメタボ率8.6%ダウン!健康経営の成功事例から学ぶ取り組みの工夫点と効果を徹底取材
②社員のアイディアで健康を促進!ベンチャーの枠にとらわれない幅広い健康経営を展開
3.健康経営を導入するための5つのステップ
4まとめ

1.社員の健康を促進する健康経営は『生産性の向上』をもたらす!

ここでは”健康経営”とは具体的にどういったものなのかを紹介していきます。昨今注目度の高いワードですので、健康経営のポイントをしっかりと押さえていきましょう。

1-1.健康経営とは

健康経営とは、『社員が十分なパフォーマンスを行えるように健康面から投資すること』です。

会社の生産性向上・業績アップするためには、社員の働きが必要不可欠になります。
また従業員の健康状態が悪化すると、他社員への負担増大・通院による医療費の発生等、会社にとってマイナスにつながります。これでは会社として不利益を被ることになりますよね。

アメリカでの研究結果でも、パフォーマンスを上げない社員を抱えることが企業にとって負担となることが証明されています。


http://www.hataraku-ikuji.jp/visit/612

出勤はしているものの、病気やけがによって生産性が落ちている状態(プレゼンティーズム)の従業員が成果を上げないでいることは、大きなコストにつながります。
医療費・薬剤費が健康コストの2割程度なのに対し、プレゼンティーズムは6割以上を占めています。
つまり、健康に問題があり病院に通う従業員より、会社に来てもパフォーマンスを発揮できていない従業員の方が、企業にとっては負担となるわけです。

健康経営は、社員の健康状態に対して『元気がないとかわいそうだから』とやさしさで気に掛けることではありません。『健康状態をしっかりと整え、会社の戦力となる働きをしてもらう』ために投資することです。

◇健康経営の背景

健康経営の考え方は、1992年にアメリカの臨床心理学者ロバート・ローゼン博士が提唱した概念『ヘルシーカンパニー』に基づいています。
アメリカでは1990年代から健康経営に対して取り組みが行われていましたが、日本では2009年頃から大手企業を中心に健康経営の考え方が広まっていきました。不況による人材コストの削減で、長時間労働やサービス残業などを強いられるようになり、従業員に健康上の問題が出てきたためです。
それから健康経営は国(経済産業省)が推進していくようになりました。2015年には『健康経営銘柄』、2017年には『健康経営優良法人制度』が作られ、健康経営に優れた企業を表彰する取り組みが始まりました。


※健康経営銘柄
経済産業省と東京証券取引所が共同で、健康経営の取り組みが優れている上場企業を選定(原則1業種1社のみ)。
これを通じて、社会全体における健康経営の促進を目指しています。また選定されると、投資家にとって魅力のある企業として紹介され、株価向上が期待できます。

※健康経営優良法人制度
経済産業省が健康経営の取り組みに優れている企業を認定。
中小規模の企業を対象とした「中小規模法人部門」と大規模企業を対象とした「大規模法人部門」が分かれています。企業名を周知することで対象企業の社会的な地位、信頼性を向上させる効果が見込めます。


2018年度の健康経営優良法人制度では、大企業部門(ホワイト500)で541法人、中小企業部門で775法人もの企業がノミネートされています。このことから、健康経営への注目度の高さがうかがえます。

◇健康経営のメリット

健康経営のメリットとして、主に下記の3つがあげられます。

①生産性の向上
そもそも健康経営の目的であり、最大のメリットです。
生産性を向上させるためには、会社の資本である社員のパフォーマンス向上を図ることが大切です。どのような環境下であれば社員のパフォーマンスは向上するのか、常にアンテナを張ることが重要です。

2013年に発表されたアメリカの論文でも、健康経営の取り組みが優れている企業の生産性が高いという結果が出されています。


http://www.hataraku-ikuji.jp/visit/612

上記グラフは、1999年に同時に10,000ドルを投資した場合、13年後の2012年業績がどうなるか仮想計算をしたものです。健康経営優良企業は最終的に17,000ドル以上、それに対して一般企業平均は9,900ドルとなっています。このことから、健康経営優良企業の方が業績は上がることがわかっています。

②医療費の削減
有給消化促進・長時間労働を防ぐ・食事面をサポートするなど、従業員が健康的に過ごせる環境を用意することで、医療機関を受診回数が減少・医療費削減につながります。
裏を返すと、目先の利益ばかり求めて社員を無理に働かせていると、医療費負担が企業に重くのしかかってきてしまいます。

③企業イメージの向上による人材確保
健康経営銘柄・健康経営優良法人制度という言葉に対しての認知度はまだ高いとは言えませんが、”健康経営”の取り組みや制度は、新卒の就活生・転職先を探している人にとって、魅力的に感じる一つだと言えます。特に中小企業やベンチャーは「休みが取りづらい、サービス残業が多い」というイメージを持っている人が多いので、そこに対するアプローチをするだけでも、採用に良い影響を与えます。

◇中小企業に健康経営に対する取り組みの実態

東京商工会議所が中小企業に向けた調査では、中小企業の約7割は、健康経営をいずれ実践したいと回答しています。
健康経営の取り組みに対して前向きに考えている企業は多いですが、その反面、何をしたらいいのか分からない…と悩んでいる企業が多いのが現状です。

中小企業に対して行った、『健康経営を実践するにあたり、課題になる(なっている)と思うのはどれですか?』という質問の回答からも見えてきます。


引用:健康経営に関する実態調査https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=104649

健康経営がどういったものを指すのかがわからないと、自社の取り組みに落とし込むことは難しいでしょう。そこで、健康経営とは具体的にどういった取り組みのことを指すのか紹介していきます。

1-2.食事・睡眠・運動…社員の健康に関わる全ての取り組みが健康経営

健康経営は、何か一つの取り組みを指すのではなく、健康に対して多角的にアプローチすることが重要になります。
ここでは健康経営の多角性についてイメージがしやすいように、取り組みの大まかな分類と実際に企業が行っている事例をまとめました。
まず健康経営とは具体的にどういった取り組みが含まれるのか、把握しましょう。

健康経営は一つ取り組んだら抜群に環境が変わるものではありません。
今自社に足りていない部分は、いずれ全部取り揃える!くらいの気持ちで環境を整えることが大切です。

図で紹介した制度や取り組みについて、WORK&LIFE内の記事で詳しく紹介しているものがあります。取り組みに興味のある方は、下記の記事を参考にしてみてください。


【休暇制度関連】
会社のカラーや想いが反映された様々な休暇制度があります。社員が心地よく休暇が取れる体制を整えてあげることが大切です。

・【休暇制度事例30選】あなたの会社、休めてる?ユニークな社内制度をご紹介!
https://and-l.jp/magazine/internalsystems/

【睡眠関連】
お昼に20分ほどの仮眠をとるパワーナップは、集中力・記憶力の向上につながります。
実際にアメリカ航空宇宙局(NASA)が行った実験によると、認知能力が34%・注意力が54%向上したとい結果が出ています。自分のデスクで15~20分ほど寝てもよいと呼びかけるなど、簡単なところから始めていくと良いでしょう。

・パワーナップは効果抜群?!3社の取材から分かった仮眠の取り組みを教えます!
https://and-l.jp/magazine/power-nap/

【食事関連】
毎日の食事は健康に大きく関わるので、社食として栄養素の高い食事を提供することで社員の健康に一役買うでしょう。社食を作るキッチンがなくても、専用ボックスに総菜を常備するサービス「オフィスおかん」等の導入でも、食生活の改善につながるでしょう。

・【お手本企業10選付き】あなたの会社でも出来る!社員食堂の作り方
https://and-l.jp/magazine/syainsyokudo/

【運動推進関連】
運動を促進したい企業は、部活を設立して運動できる環境・場面を作ったり、オフィススペースで運動できる空間を取り入れると良いでしょう。

・会社の部活ってどうやって作るの?事例からわかる良い効果とは
https://and-l.jp/magazine/company-club-activities/

・社内ボルダリングによる社員のモチベーションアップと健康維持の全容を大公開!さらには求人倍率が5倍に!?
https://and-l.jp/magazine/office-bouldering/

・オフィスでバランスボール!7つの効果と注意点
https://and-l.jp/magazine/ballanceball/

【オフィス環境】
オフィス環境の良し悪しも、社員のパフォーマンスに影響を与えます。グリーンやBGM、アロマは比較的簡単に取り入れることができるので、下記の記事を参考に取り入れてみましょう。

・【グリーン導入事例50選】オフィスに芝生?!グリーンの斬新な取り入れ方をご紹介!
https://and-l.jp/magazine/office-green-2/

・オフィスにBGMを! すぐに試せる方法大特集!
https://and-l.jp/magazine/office-bgm/


2.健康経営の取り組みが活発な中小企業特集!事例から学ぶ取り組み成功の理由とは?

ここでは実際に健康経営に注力している、中小企業・ベンチャー企業を紹介します。
企業の色があらわれた取り組みになっているので、何を目的にどんな取り組みを行っているのか、参考にしてみてください。

①毎朝筋トレでメタボ率8.6%ダウン!健康経営の成功事例から学ぶ取り組みの工夫点と効果を徹底取材

2011年から全従業員で毎朝スロートレーニングを行っている協和に、健康経営の取り組みや工夫点、取り組みの効果を徹底取材してきました!
東京大学大学院の理学博士兼元ボディビルダーの石井氏が考案したトレーニングを、元競歩のオリンピック選手で現社員の栁澤様が社員のためにプログラミングし、スロートレーニングとして社員の健康を向上させています。
スロトレは費用・場所をとらずにどの企業でも取り入れやすいので、参考にしてみてください!

今回取材させていただいた、販売グループ企画チーム PR担当リーダー上間様(写真右)、人事・総務チーム チーム長 小泉様(写真左)。

◇株式会社協和
従業員数:97名
事業:化粧品・美容健康食品の製造、販売
公式HP:https://www.kyowa-group.co.jp/

【健康経営に取り組んだきっかけ・目的】

美や健康の商品を扱うなかで、お客様に商品だけでなく日常で出来る美や健康に関する情報を伝えたいという思いから、健康経営に取り組まれています。

「通販事業を行っているのですが、顔が見える通販・身近な通販を目指しています。その中で商品を購入いただいたお客様をイベントに招待し、美と健康につながる取り組みをお伝えしたいという想いがありました。そのためには、まず自分たちで実証しようと始めました。」(上間様)

スロトレをメインに行っているのは、年齢とともに筋肉が減っていく中で、改めて筋肉の必要性に気付いたことがきっかけだそうです。また、お客様の年齢層も踏まえ、体を鍛えながらアンチエイジング効果を得られるものが良いという考えのもと行っています。

【取り組み内容】

▼毎朝、全従業員が行うスロトレ(スロートレーニング)

ゆっくりした動作で体に負荷をかけ、短時間で効果を得られるトレーニングを実施しています。
元オリンピック選手・現社員の栁澤様が監修しています。トレーニング後は6時間以上代謝がアップするので、日中の営業などで歩くことでより脂肪が燃焼されるそうです。

「石井教授は、無酸素運動(スロトレ)を最初にやって、その後有酸素運動(営業回り時の徒歩)を行うことで、より脂肪を燃焼しやすいと言っています。」(上間様)

スロトレを取り入れることによる効果は期待できそうですが、当初はいきなりトレーニングをやるということに、特に女性の社員から戸惑いの声が上がったそうです。
そういった状況を打破しスロトレが社内に浸透するように、下記の工夫を凝らしています。

・代表自ら、健康の大切さを社員に伝える
・就業時間を15分前倒しにして、体作りを仕事の一環と捉えるよう意識づけ
・新しく入社した社員にはスロトレの意義を共有
・女性がスカートを履いたまま気軽に出来るトレーニングを考案
・1人あたり肩幅+30~40cmほどの省スペース使用で、全従業員一緒に出来る

 

「トップの堀内が『提供するなら自ら鍛えたりして健康的じゃないとダメだ』という思いがあり、社員に向けて常に発信しています。
また、就業時間を15分前倒しにしてスロトレを仕事の一環として行うようにしました。各社員が体づくり自体を仕事の一環として捉えられるようにするためです。」(上間様)

どうしたら社員それぞれに健康に対する意識が芽生えるのか、スロトレが浸透するのかを考えて取り組みを行っているのが印象的でした。
取り組みを開始したから終わりではなく、代表自ら社員に伝えていくことや、社員が取り組みやすいように改善を重ねていったからこそ浸透したのだと思います。
こういった取り組みを行った結果、スロトレは2011年から実施率100%とのことです!


★栁澤様に実際にスロトレを教えてもらいました!

デスクに手のひらの付け根を置き、机と腕が90°になるようにセット。
足は延ばしたままです。(しんどい場合は膝を曲げるとやりやすいです)
そのまま息を吸いながらお尻を下げ、吐きながら上げる上下運動を10回行います。この時、上腕が使われていることを意識しましょう。
実際にやってみると、たった10回でも筋肉に効いているのがわかります!少ししんどいですが、手軽にできるのでおすすめです。


 

▼その他の取り組み
・1日1種類のフェイスアップトレーニング
・歩数計の配布、ウォーキングイベントの参加
・スタンディングデスクの導入、スタンディングミーティングの推奨
・9階オフィスまで階段を使っての出社
・人間ドッグは35歳から受診可能(一般的には40歳から)
・ストレスを解消するためのオフィス環境づくり(BGM・香り・グリーンの設置)


執務スペースの中心にあるグリーンは存在感抜群!リラックス効果も高く、社員の集中力向上に一役買っています。

【効果】

スロトレを中心とした様々な健康経営に取り組んだ結果として、社員の健康に対する意識の醸成や、数値としても効果が表れてきました。

◎健康に対する意識の醸成
『お客様にお伝えできることは自分自身で取り組もう』という精神のもと、社員は自主的に健康経営に取り組んでいるそうです。
社員の中には、入社時に腰や膝の痛みがひどくてゴルフが出来ない状態だったのが、スロトレを始めたことで痛みが軽減し、毎週ゴルフをやれるほどになった方もいるんだとか!
トレーニングのやり方が正しいかを自ら確認に行くなど意欲的に取り組んだ姿勢が、結果として表れています。

◎メタボリックシンドロームの割合が減少
メタボリックシンドロームの割合は、厚生労働省が出している平均値の-8.6%、予備軍も-2.1%とだいぶ低い数値となっています。健康診断も年相応の人と比べると標準値の割合が多いようで、数値でも健康経営の効果が見られています。

◎健康経営の取り組みが国や都に認定される
運動の促進に力を入れた取り組みは、国や都に優れた取り組みとして認定されています。
・東京都が認定する「東京都スポーツ推進企業」3年連続受賞
・スポーツ庁が認定する「スポーツエールカンパニー」受賞

★協和の健康経営運用ポイント★
・代表自らが健康の大切さを理解し、社員に重要性を伝えている
・就業時間内に行うことで、社員に健康づくりも一つの仕事であると意識づけをしている
・トレーニングは場所をとらず、女性がスカートでも出来る気軽なものを選定している

 

インタビューにご協力いただいた上間様、小泉様ありがとうございました。
健康経営に取り組んだ目的である『お客様に美と健康の情報を届けたい』という想いが、全社員に浸透しているのがインタビューを通して伝わってきました。
健康経営の取り組みを制度化させただけで終わらせず、常に社員がどうしたら取り組みやすいかを考え実行していることが、効果としても表れていると感じました!

続いては、ベンチャー企業でありながら健康経営に先進的に取り組んでいる、他の企業も紹介していきます。

②社員のアイディアで健康を促進!ベンチャーの枠にとらわれない幅広い健康経営を展開

じげんは成長フェーズにあるベンチャー企業として、『社員に与える裁量が大きくなってしまったときに、会社として社員をどうフォローできるか…』を考えて健康経営に取り組んでいます。『社員にも積極的に案を出してもらって、健康ニーズを拾い上げて実現していきたい』という思いから、社員の声に寄り添った制度の導入を実現しています。


https://hiro-mizushima.com/gallery-zigexn-clo-project

◇株式会社じげん
従業員数:(単独)114人、(連結)346人
事業:ライフメディアプラットフォーム事業
公式HP:http://zigexn.co.jp/#zigexn_top

【健康経営に取り組んだきっかけ・目的】

事業の多様化・多様な人材が働いている中で、社員が最大限にパフォーマンスできる環境を作りたいという思いから、健康経営を取り組まれています。
また『全員人事』の方針のもと、『会社をもっとよくするために福利厚生などのアイディアを社員から出してもらう』取り組みの中で、社員から健康に関するニーズが多かったことも、健康経営に取り組み始めたきっかけの一つとのことです。

【取り組み内容】

▼産業医(SMO)が月1回のペースで全員面談を行う
じげんでは、「Super Medical/Mental Officer(SMO)」という役職を置いています。通常の産業医業務に加えて、以下のことに取り組んでいます。

・経営陣と連携をとりながら、メンタルヘルス問題について予防的な措置を講じる
・組織のあり方や制度について助言し、社員が万全のコンディションで力を発揮できるよう支援
・残業時間が多かった社員への高ストレス者面談
・月1回来社するタイミングで数名ずつローテーションで全員面談。現状の業務や今後の働き方について話し、不調の兆候などがあれば先生から人事にフィードバック

 

また社内にSMOが浸透するように、初めに全社員に対して挨拶の場を設けたそうです。自己紹介とともに、メンタル不調がなぜ起きてしまうのかメカニズムを話す場を用意したことで、社員が身構えることなく相談できる環境を作るなどの工夫を凝らしています。

▼健康経営委員会の設置
SMOを迎えるタイミングで保健委員・衛生委員会が設置されています。お昼寝を許可する制度を設ける際にも、「何分間の昼寝が適切なのか」「上手なお昼寝のコツ」といったことについてSMOにアドバイスをもらい、それを「保健だより」として全社に流す取り組みを行っています。

▼Napping Minutes(エヌミニッツ)20分間のお昼寝制度
この制度は社員の提案から生まれたそうです。時間は定められていますが、20分間仮眠をとることが出来る部屋が用意されています。じげんでは、お昼寝は生産性を向上させるためのものであり、休憩ではなく労働と捉えられています。そのため、就業時間内に仮眠をとることが出来るよう環境が整えられています。

▼社員が自主的に運動できる環境づくり


https://sangyoui-navi.jp/blog/43

こちらも「オフィスにフィットネス設備が欲しい」という社員の意見から、運動できる環境が用意されています。執務スペースには、フィットネスバイクにテーブルが付属しているフィットデスクを導入。運動しながらデスクワークや打ち合わせができるので、運動不足の解消に効果的だそうです。
こういう取り組みを進めていく中で、屋上を開放してフラフープや縄跳びを自由に利用できたり、お昼休みを1時間延長して勤務時間にスポーツに励むことができる制度の導入など、積極的にスポーツに取り組める環境も導入されています。
また、体重増加を気にかける社員たちが参加する「ダイエット同盟」も発足し、健康に対する意識も高まっているそうです。

▼気分転換して働けるオフィススペースの設置


https://hiro-mizushima.com/gallery-zigexn-clo-project

4階には執務スペースとは別に、仕事を行えるオープンスペースが開放されています。
「気分を変えたい」「いつもと違う場所で集中したい」ときに活用できる場となっているそうです。また、執務フロアには靴を脱いで上がれる「ちゃぶ台会議室」を設け、リラックスした状態で柔軟な発想ができる環境が用意されています。

【効果】

これらの取り組みは、社員の健康に対する意識の醸成や、スポーツ推進モデル企業としても社外に高く評価されています。

◎健康に対する意識の醸成
「調子が悪くなったら早めに相談して解決しよう」と意識が各社員に生まれ、社員同士が健康に対して呼びかける姿も増え、全体的に健康に対する意識が上がったそうです。

◎運動関連の取り組みが東京都のモデル企業として認定される
運動関連の取り組みで、社会的な影響や波及効果の大きい取組をしている企業が認定・表彰される「東京都スポーツ推進モデル企業」として選定されています。

★じげんの健康経営運用ポイント★
・社員の健康ニーズをくみ取り、制度・取り組みを実施する
・産業医を導入し、専門的な意見を制度に落とし込む

 

ベンチャー企業でまだ発展途上だから、と社員の労働環境をないがしろにしては生産性もあがりません。
じげんのように社員が最大限にパフォーマンスできる環境を考え、社員の意見を吸収しながら健康経営の取り組みを推進すると良いでしょう。

3章では健康経営を導入するためのステップを紹介していきますので、自社に取り入れる際の参考にしてください。

3.健康経営を導入するための5つのステップ

ここでは、健康経営を導入する際に行うべき5つのステップを紹介します。
健康経営が経営陣・人事担当者だけでなく、しっかりと社員各々に共有されるよう組織作りを行うことが大切です。
ここでは健康経営を導入する際に必要なステップを紹介しますので、導入を検討されている方は参考にしてください。

※経済産業省 企業の「健康経営」ガイドブック参照
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkokeiei-guidebook2804.pdf

ステップ① 健康経営を導入する意図・目的をはっきりさせ、トップから発信する
健康経営をやる意味をしっかり持たなければ、せっかく整備した制度・環境も形骸化してしまいます。社員が健康でいることの必要性を感じ、協力的になれるよう、トップからしっかりと意図を発信することが重要になります。

ステップ② 健康経営を推進していく部署・担当の設置をするなど組織体制を整える
健康経営を進めていくには、担当を設置するなどの対応が必要になります。これは直接的に利益に直結するわけではないため、ないがしろにされてしまう可能性があるためです。
また効果的な健康経営に取り組むためには、専門部署の設置や人事部など既存の部署に専任職員・兼任職員を置く等で対処しましょう。
トップの意図をくみ取り、全社員に共有するパイプ的な役割を担うので、組織体制を整えることは非常に重要です。

ステップ③ 従業員の健康状態(課題)を把握する
施策を考える上で、健康診断の結果や長時間労働の状況等、社員の健康に関わるデータを把握することが大切です。
例えば、特定の部署に健康状態の悪い従業員が集中している場合は、業務内容・職場環境が健康状態を悪化させている可能性があります。職場の環境改善、業務負担の見直しを検討する必要があるかもしれません。またメタボ対象者や予備軍が多い場合は、将来的に糖尿病等の生活習慣病が重症化し、医療費負担・生産性低下・長期欠勤等が増えるかもしれません。社員の健康状態を把握することで、企業として対応すべきことが見えてきます。

ステップ④ 取り組みに対して目標を設定し、計画を立てる
施策を行う前には、施策を通してどうなっていきたいか『目標設定』することと、目標に対していつまでにどういう結果が出るようにするか『計画』を立てることが大切です。
目標設定をしっかり行うことで、計画が正しく組み立てられているのか確認することが出来ます。目標に対して、計画が正しくできてない場合は改善することも必要です。このとき企業内の担当では対応が難しい場合は、専門家に相談するのも一つの手です。

ステップ⑤ 施策を実行する
策定した計画に沿い、施策を実行します。
施策を始めたから終わりではなく、常に健康経営が社員にとって効果的であるか等、しっかりと結果を追うことを意識しましょう。

4.まとめ

いかがでしたか。
中小企業・ベンチャー企業であっても、健康経営は十分に取り組めることがわかりましたでしょうか。
各企業の社員の状態によって、どんな健康経営を行う必要があるのかはそれぞれ違います。
まずは現状を把握することから始めましょう。そして、健康経営を行うにはそれぞれの取り組みに対して目的をはっきりさせ、それに沿って制度・取り組みを行うことが大切です。
今回紹介した事例やポイントを押さえ、健康経営の導入を前向きに進めていきましょう。